[view03] 俺が死んだあの時、一体何が起こったのだろうか。 記憶は戻らず、金銭の類も持っていない。頭の中に陣取っている靄は未だに去りゆく気配を見せず、思考の妨げの一つとなる。 「やめろー!」 大根役者は大根役者なりに棒読みの台詞を少しでもマシにしようと、大声を出して頑張ってみたが結局は変わらないように思えた。 言っている本人が思っているのだから、他人となれば尚更だろう。 「何っ?!」 俺の体当たりを受けて、蛇苺が怯む。……フリをする。 「マスターに手は出させないぞ!」 俺は茶色いコートを着た金髪の男を後ろにかばう様な位置へと移動する。 「くっ……2人なっては分が悪い、次の正義までに首を洗って待っていろ!」 「……退却」 後ろで黒風が呟くと同時に、蛇苺が何かを地面に叩き付ける。 白い、透過性の低い煙が辺りを包み込んだ。 まるで、煙に溶けてしまったように2人の気配が足音を立てずに消える。 「……」 俺は後ろの人物に気づかれないよう、小さくため息をつく。 ある意味、ここからが本番だ。 「キミはー……」 後ろにいる金髪の男-----吸血鬼が控えめに話しかけてくる。 「……あなたのグールです。マスター」 ゆっくりと振り返る。 俺の始末が予定されていたことは2人の簡単な自己紹介の後に聞いた。 正直な話、ビックリどころの話じゃなかった。 大体にして、自身がグールとかというものということ自体がまず信じられない。 死んで、生き返って、殺される。 ふざけるな 俺は、蛇苺につかみかかった。 「まーまー、落ち着きなよ」 「落ち着いてられるか!」 「けど、殺されるよ。このままじゃ、確実にね。というか、あたし達が殺してその首を持って帰ってもいいんだよ?」 「!」 「依頼された時には、都合上受けられなかったが、今ここで遂行してもなんら問題は無いわけだからな。俺は携帯電話を持っているから連絡つくし」 黒風が振った視線を蛇苺は瞬時に避ける。 「という訳で、ここからが本題でーす」 いつの間にか、蛇苺は俺の手からすり抜けている。 「本題……?」 「今回、あたし達がグールの始末する理由は自我が無く、食人作用があるため、人間に危害を加える可能性があるからです。ですが!」 どこか台詞を棒読みしているような蛇苺が、俺に指先を突きつける。 「現在観察しているところによると、自我が無い様には見えません。今現在まで被害が出ていないことをからある程度は食人作用も押さえつけられていることが伺えます」 「はぁ……」 「という訳で、吸血鬼のお供に成ってみよー!」 「へ?」 正直、話の流れについていけない 「吸血鬼とは元来、単体で行動することは少ない種族だ。その理由の一つには真祖に近ければ近いほど日光に弱い事が上げられる」 黒い平たい棒のようなものを玩びながら黒風は続ける。 「真祖によって、作られた吸血鬼は真祖を殺すことはできない。何故なら、繋がっているからだ」 「繋がっている……?」 「頭を叩けば蛇は死ぬ。真祖を殺せばそいつから作られた吸血鬼は連鎖的にすべて死ぬんだ。まあ、ある処置を施さなければだが」 グールとかいう存在だけでもいっぱい、いっぱいなのに、正直訳が分からなくなってきた。 というか、いつの間にかファンタジーが現実と混じっているのが普通になっている。 「他にもいろいろ便利だからな吸血鬼は大抵はそういった下級吸血鬼を一人持っている。が、都合のいい事にお前を作った吸血鬼は現在、お供がいない」 「作らないのか?」 「作れないのさ。お前のマスターである吸血鬼――サーシャルって奴は感染能力が低くてな、今の今まで、お供を持ったことが無い。もちろん行動が制限されるし、不便なことが多い」 「そこで、君の登場です」 蛇苺がにやりと笑う。 「なんかよく分かんないけど、君がサーシャルのグールであることは間違いない。ということは、グールが吸血鬼を襲った前例が無いことからして、君もサーシャルを襲わない。そして、何より」 再び、蛇苺は俺に指を突きつける。 「君は日光の中で動けた。これ重要」 確かに、商店街を歩いていたが灰になることはなかった。 「さて、以上の点を踏まえて。今から話す<サーシャル救出八百長作戦>後に、説得してみよう! 心配しなくても大丈夫! 多分うまくいくよ、サーシャルすごくお供欲しがってたからね!」 晴れやかな笑顔を浮かべる蛇苺に頭を掻きながら俺は問いかける 「俺は殺されることもなくなり、居場所もできて非常にありがたいんだが……あんた等はなぜ、ここまで手伝ってくれるんだ……?」 蛇苺は首をひねり、視線をあさっての方向に向けた後、笑う 「……いい人だから、かな」 「あの、俺……」 ここで俺が生き残るためにすることは、自分の有用性の提示。 そのために必要な鍵は「自身が自我を失っていないこと」、「マスターのことを思っていること」この2つを伝える成功しなければいけない。 ……らしい。 すべて、あの兄妹の受け売りだ。本当にこれでいいのか疑わしい。が、これに乗る以外の手が無いし、思いつかないというのが現実だ。 どこか、複雑な表情をしている吸血鬼が口を開きかける。 その後ろに、何かが とっさに俺は |