第4章 [view04] あの時、 包帯をほどきながら、ふと思い出す。 久々に日本に立ち寄り、天坂兄妹の顔でも見ていこうと思いながら夜空を飛んでいた時にそれは起こった。 建物の隙間と隙間を移動する関係上、蝙蝠の形状をとっていた。 痛みを感じると同時にバランスを崩した。が、幸い落下することはなかった。しかし皮膜を何かが突き破りそのまま飛んで行ったのは、後で見た傷跡から想像できた。 その後、何か重いものが落ちたような音がしたようなしなかったような。 まあ、自分には関係ないことだろう。 死会に関係している宿泊施設か出ると、雲一つない空に僅かにかけた月が昇っていた。 何かがおかしいと感じたのは、暫くしてからだった。 そして、原因は意外とすぐに僕の前に姿を現した。 人通りが少ない一本道の路地裏。目の前に堂々と、彼女は姿を現した。 「見つけたぞ! 悪魔め!」 顔を尖った耳をした黄色い電気ネズミのお面で隠した蛇苺が、僕に人差し指を突きつける。 そこはかとなく、裏声だ。 「……? 新しイ遊戯ですカー? 蛇苺」 途端、蛇苺は体を硬直させる。気づかれるとは思っていなかったらしい。 「……違う! 私は正義のヒーロー、ジャスティス・イエロー!」 どこかで見たことのあるよう無いようなポーズを蛇苺が決める。 なるほど、そういうことか! 「フフフ、良く現われマシタね、ジャスティス・イエロー!」 両手を上にあげて、適当なポーズと取る。 ニンニクの匂いがするが、投げつけてくるつもりだろうか? 「悪魔よ! 正義の鉄拳で成敗してくれる!」 効かないということは千も承知だというのに敢えてそれを持ってくるということは他に何か思惑があるのかそれとも―――― 相変わらず思考がユニークで予測がつきにくい。 「仲間もいるから逃げられないぞ! 覚悟するがいい!」 そう言われて、僕は初めて後ろにもう一つ気配が現れていることに気が付く。 振り向くと、 「……」 「……」 水色のカメのようなお面を被った黒風が、【仲間】と書かれたスケッチブックを胸の前に掲げ、佇んでいた。 ほんのり哀愁が漂っている様に見えるのは気のせいだろうか。 「兄さん、台詞台詞」 後ろから蛇苺の小声が飛ぶ。 「……正義のヒーロー、ジャスティス・ブルー」 「さあ! ジャスティス・イエロー、ジャスティス・ブルーが揃ったからにはお前の悪事もここまでだ!」 ノリノリの蛇苺のせいで、小声で俯いている黒風の哀れさが一層引き立っている。 「挟み撃ちトハ、悪魔にも劣らぬ小癪ぶりデース! さあ、掛かッテ来いデス!」 「いくぞ!」 蛇苺がどこからかニンニクを取出し、右足を一歩引いた。 そして、 「アウチッ!」 蛇苺が投げた、ニンニクが僕の額の真正面にあたった。早い。体勢を後ろに崩した。 体を分散して避けるにも、速度が速すぎて対応できなかった。投げつけられたニンニクは粉々になって宙を舞っている。 まあ、遊びだし次はもっと軽い球が…… 「2発目……」 さっきと同じフォームを蛇苺はとる。しかも、悪ノリしている時の輝かしい笑顔だ 「エッ、ちョ……ヘビ苺?」 マジですか? 「いきます!」 「やめろー!」 |